2015年04月10日

15/4/9




わたしの首、あなたの首、幼い頃に一度だけ出会ったあの子の首。
みんな晒し首で待ってるよ!
地獄ヶ淵首塚ランドは年中無休で喪中も休まず営業中。

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2015年04月07日

15/4/6


母方の祖父が死んだ。
それでバタバタしてブログの更新もままならかったわけだが、老衰で御年九十八の大往生だから、祖母が穏やかに「長い間お疲れ様でした」と言うくらいで、集まった親戚縁者一同も「死ぬときはこうでありたいね」なんて言い合う和やかな雰囲気。


私は手伝いのために祖母の家に泊まった。
その深夜3時ごろだろうか、ガタッっと音がして目が覚めた。物音が続く。
音は祖父の眠る部屋から聴こえてきた。
嫌な気分ではあるが、確認しないわけにはいかない。

祖父が廊下をゆっくりと歩いていた。
……もしかして爺さんは、まだ死んだことがわかってないんじゃないか。
恐怖と切ない悲しさで、私は隠れて見ていることしか出来ない。
祖父はそのまま便所に入って、しばらくして出てくると、ちゃんと棺の中に戻って自分で蓋閉めた。
ああ、爺さん死んだことちゃんとわかってるんだーって安心した。蓋が少しずれてたから直してあげて、また寝た。
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2014年09月17日

点検している若い男

14/09/06


スーパーによって有るところと無いところがあるんだけど、壁際の肉類なんかの陳列棚の、内側の側面が鏡になってるやつ、わかりますか。
あの棚に顔突っ込んで、あの鏡で自分の顔を点検している若い男がいたんですよ。片手で顔をいじりながら、片手をズボンの尻に突っ込んで。ポケットじゃないよ、ズボンの内側に直接手を突っ込んでるの。
外見に気を遣うのか遣わないのか、はっきりしろ!

このことブログに書いてやろ、と思って、(ズボンの中の尻、ケツ)などと頭の中で言いながら買い物していたら、その中のワンフレーズ(ケツゥ〜)に聞き覚えのある響きを感じ、これは一体どこで聞いたのだろうと考えてみると、落語にあったような気がする。しかし、こんな落語があっただろうかとさらに考えてみると、小三治の野晒しにあった「コツゥ〜?」であると突き止めた。

釣り場にやって来た或る男が餌もつけずに釣ろうとするのを指摘され、「俺は魚じゃなくて骨(コツ)を釣りに来たんだ」と言い出したので、周囲は「コツゥ〜?」と訝しがる。
そういう場面があるのだ。


で、この日は結局ブログには書かなかった。
忙しくて。ネットサーフィンしたり、マンガ読んだり。

でも、みんなに楽しいブログを届けたい! っていう強い想いを私は一日たりとも忘れたことはなくて、そのせいで、この日の事を夢に見たんだと思う。


こんな夢。
スーパーで買い物をしていると、虚ろな目をした知らないお爺さんが買い物かご持って、「墓石ぃ〜」と言いながら徘徊している。私はそれがおかしくてしょうがない。お爺さんの視界に入らないところで、くすくす笑う。


目が覚めて暫くは意味がわからなかったけど、あっ、昨日の尻だ、って。
尻からでた野晒しの骨が、死のイメージから墓石に転じた稀有な例です。ケツto墓石.





あれは人間に化けた狐狸の類が顔や尻尾を気にしていたのではないか、と今では思っています。
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2014年08月16日

全然知らなかったんだよ



人生の上限が見えるっていうのかな、仕事が長続きしないし、あんまり金ないし、何にも期待できることがなくて、なんかもう人生が上向きになる要素が何もないのがわかってしまった。
金さえあれば、人生がかわる。
でも、その金を持ってくる才知ってのがないんだわ。宝くじなんて当たるわけないし、もう裏技使うしかない。それで、銀行強盗やった。

なるべく捕まらないように、まだ一度も行ったことのない、かなり遠い土地まで行ってさ、銀行を探して、包丁と袋持って突撃したんだよ。そう簡単に成功するわけないって思うだろうけど、こっちは切羽詰まっているから鬼気迫るものがあったんだろうね。包丁振りまわして怒鳴ったら、向こうもすごく驚いてくれて、その分ちょっと手間取ってたけど、袋いっぱいに札束詰め込んで貰えた。
銀行出て、用意しておいた服に着替えて、行きとは違うルートで遠回りしながら家に帰った。何日かかけてね。銀行の金には一切手を付けていない。袋を開けもしなかった。ほとぼりが冷めるまで使うわけにはいかない。まあ、10年くらいは寝かしとくつもりで。

それから毎日、ニュースに目を通した。でも、俺がやった銀行強盗を伝えるニュースは一度も見かけなかった。
何か他に大きなニュースがあったわけでもないのに。
不思議というより、不気味だった。

しかしまあ、そんなものなのかもしれない。世の中のすべての事件が報じられるわけではない。
大きな銀行ならば必ず報じられただろうが、俺が入ったのは名前もよくわからない小さな銀行だった。規模に比例して扱いも小さく、紙面や画面に出る程ではないのかもしれない。もしかしたら、警察は極秘ですごく大きな事件を捜査していて、マスコミも極秘でそれを追っかけていて、小さな強盗にはあまり構っていられないのかもしれない。


10年後にはこっそり大金持ちになるんだ!って思うと生活に張りが出て、そのうち、もっと上を目指そうという上昇志向も芽生えてきた。
つまり、もう一度銀行強盗やってやろう、という意欲だね。
やり方も、あの銀行なら騒ぎにならないってのもわかったし、もう一押しやってみるか! と。
一度押しかけている分、向こうも今度は手順がわかって手早く札束詰めてくれるかもしれない。
いいぞ、これはいけるぞ。最初の強盗は不安と緊張でいっぱいだったけど、二度目はすごくわくわくしていた。裏技で攻略法をマスターした感じ。

それで準備を整えて、記憶を頼りに意気揚々と同じところに行ったんだ。
そしたら、銀行のあった建物が廃墟になってるんだよ。あ、俺が強盗に入ったせいで潰れちゃったんだ! ってびっくりして、よくみたら前回からまだ半年くらいしか経ってないのに、荒廃具合がそんなものじゃない。
近くをのそのそ歩いてた婆さんに声かけて、適当な世間話から「あの建物って何があったんです?」って訊いてみたんだ。「あの銀行潰れたんですか?」とは訊かないよ。遠回りに訊くよ。もしも警察の捜査がこの婆さんに及んだ時、銀行を気にかけていた男がいたなんて言われたら嫌だからね。
そしたら、婆さんは銀行の支店だったと言う。それはいいんだけど、もう20年近く前に大手の銀行と合併して支店も移転、あの建物は以来閉鎖されたまんまだと言う。
そんなわけないんだよ、俺が半年前に強盗したんだから。確かにここだった。一応、支店の移転先も見に行ったけど、そこは初めて見る場所だった。絶対にこの廃墟こそ、俺が包丁持ってった建物なんだよ。

すっかりわけわかんなくなって、遠回りもそこそこに急いで家に帰った。
まだ開けていなかった袋を開ける。もしかしたら全部夢で中に札束もないんじゃないかって少し不安になったけど、中身はちゃんと札束だった。じゃあ、あの廃墟はどういうわけなんだ?
考えてみたが、わからない。しかし、冷静になって考えてみれば、あの銀行があろうがなかろうが、ここに大金があるってのが重要であって、強盗はまた小さな銀行を見繕って飛びこめばいいのだ。
金はある。それでいいじゃないか。
札束を見ていると、何か変な感じがする。こんなに沢山の金は持ったことがないから、感覚がおかしくなったのかなって最初は思った。ゲシュタルト崩壊みたいな。
束から一枚引き抜いて、注意深く見てみる。すると、日本銀行券って書いてある部分が、日本霊界銀行券になっていることに気付いた。他の札も調べてると、全部そうなっている。偽物を掴まされたのか。しかし、この手触りや細工の精密さは何だ。自動販売機のような機械には使えないだろうが、人間相手なら使えるだろう。わざと偽札を使わせて、その流通範囲から俺を絞りこむつもりか。いや、そんな捜査が出来るわけはない。
明らかに偽物だけど、作りが精巧過ぎる。これは元々何に使う金なんだ。
その時、部屋のドアが開いて警察が踏み込んできた。「霊界警察だ! 銀行強盗容疑で逮捕する!」




自分でも知らなかったが、俺は1年前に死んでいた。
ところが死んでいたことを知らなかったので、現世と霊界を無自覚に行ったり来たりする中途半端な存在になっていたようだ。
強盗に入ったのは霊界で、ニュースや廃墟を見ていたのは現世。霊界の方では強盗が結構大きなニュースになっていたらしい。俺が現世と霊界をうろうろするので、捜査は難航したという。
こんなことって、あるんだね。
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2014年02月09日

真景耳なし芳一



今は昔、或る寺に芳一という琵琶法師がいた。
その腕前は、平家の亡霊から壇ノ浦の弾き語りを請われるほどであり、盲目の芳一は相手が亡霊とも知らず、請われるままに夜毎琵琶を携え墓場へ通うようになった。

それに気付いた和尚は、このままでは芳一が亡霊に取り殺されてしまうと思い、事の次第を話して小僧たちに手伝わせ、芳一の体中に経文を書いた。これで亡霊には芳一が見えなくなるので、諦めて二度とやって来るまい。

晩になって芳一のもとへ亡霊がやって来たが、芳一の姿が見えない。呼んでみても、勿論芳一は黙っている。
亡霊は諦めて帰ったが、その前に、芳一の耳を引き千切った。そこだけ経文が書き忘れられていて、見えていたのだ。芳一は声を上げることも逃げることも出来ず、痛みに耐えるしかなかった。


朝になって和尚たちが目にしたのは、後光を放ち、座禅を組んで宙に浮く芳一の姿だった。まるで仏様である。
驚き戸惑う和尚たちに、芳一は穏やかな声で耳を失った顛末を語った。
しかし、芳一のこの有様は一体どういうわけだろう。小僧たちが解せずにいる中、和尚だけが得心して膝を打ち、それに芳一は微笑んだ。

和尚は小僧たちに芳一の姿の訳を話した。
「おまえたち、『水からの伝言』を知っておるな」
「はい、良き言葉をかけた水からは良き形の氷の結晶が出来、悪しき言葉をかけた水からは悪しき形の氷の結晶が出来るというもので、学校教育にも用いられる教えであります。
つい最近、ヨシノブと話した統一協会の信者からもこの話が出ておりました」
「うむ。では、よく考えてみるがいい。有難い経文を書き込まれた芳一の体の中で、唯一耳だけには書洩らされていた。その耳が失われた今、芳一の体は全き経文に包まれたのだ。するとどうなる。ありがとうで結晶が美しくなるのであれば、経文で人体は」
「……ああ、ああ!」
「そう、細胞レベルでの全身悟り状態じゃ」


芳一の解脱ぶりは、体内でゴルジ体やミトコンドリアが梵字を描き、レントゲンを撮れば曼荼羅が写るほどであった。
統一協会の教えに深い関心を寄せた和尚たちは、駅前で配られていた文先生の自叙伝を読み、すぐさま入会した。
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2014年01月21日

むじな

暗い夜道を歩いている男、道端に背中を向けてしゃがみこんでいる女を見つけ、心配して声をかけた。振り向いた女の顔は……目も鼻も口もない、のっぺらぼう。

きゃッと声をあげて逃げ出した男は、遠くにぽつんと灯る明かりを見つけ、息を切らせて駆け込んだ。そこは蕎麦の屋台で、客はなく、店主が一人。
店主が男の方を見ずに器を洗いながら、声をかけてきた。

「いらっしゃい。……どうしたんです、お客さん。そんなに慌てて」
「ハァ……ハァ……。実は、今そこに女がいて、その顔が……。ああ! 恐ろしくて言えやしない!」
「……もしかして、その女はこんな顔をしちゃいませんでしたかね」
店主がさらさらと紙に描いて見せたのは、あの眼も鼻も口もないのっぺらぼうの顔。
男は目を回し、ウーンと唸って気絶してしまった。
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2013年11月04日

今週の妖異怪録図絵

妖怪 牛乳飲み

もともとは牛乳嫌いの子供に代わって牛乳を飲んでくれていたのだが、天地冥界戦乱で闇邪神ベルウェアーリスの七つある眼を六つまで射抜いた後、一瞬の隙を突かれてベルウェアーリスの弟神ハドアーリスから地に叩きつけられ顔の半分を潰して以来、牛乳嫌いとそういうでもない子供の区別がつかなくなり、手当たり次第に牛乳を飲むようになった。
牛乳を黒いもので覆っていれば飲まれずに済む。


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2012年12月24日

2011年09月18日


前に私が書いた話と同様の要素がある話を見つけた。
私の日付は2011年09月18日、向こうが1年後の8月20日。
実話と銘打たれている。在りそうな話である。



 

 

  おたんじょうび、おめでとう。

 たかしちゃん。たかしちゃん。
 おたんじょうびプレゼント、あげるね。
 ぼくの、おとうとの、みぎてだよ。
 たかしちゃんになら、あげるよ。
 おとうとのみぎては、
 じがじょうずにかけるし、
 えもじょうずにかけるし、
 おはしのつかいかたも、じょうずなんだよ。
 だから、たかしちゃんは、おとうさんとおかあさんから、
 あんなに、おこられなくなるよ。
 かわりに、たかしちゃんのみぎて、ちょうだいね。
 みぎてがなくて、おとうとが、ないているの。


http://qazwsx.seesaa.net/article/226431329.html
(いちいちリンクを踏ませるのは面倒なので全文転載してます)






怖い話まとめブログ:『きっかけはオタ道』
http://khmb.blog92.fc2.com/blog-entry-5882.html
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2012年08月27日

怪しい芸能

夏彦のコラムに、読者からの手紙を紹介したものがある。
そのなかでも詩吟の話が良い。何でもないことを大真面目に言う可笑しみがある。

昭和三十六年生まれの或る主婦。詩吟を習っていた父が、頼山陽の「静御前」をよく吟じていた。

これは漢詩のなかに静御前の和歌を一首挿入したもので、ペギー葉山の「南国土佐を後にして」のなかに忽然とよさこい節が現れるにも似て「詩吟なんて何でもありなんだから」と母は言いました。かねてから母は詩吟を怪しい芸能と思っていたのです。

(中略)

父の詩吟の本にも「兎と亀」が載っておりました。
まず童謡「兎と亀」をうたってから
亀さん亀さん 汝なんぞ遅き 兎は已にここにありと嗤って麾く
油断大敵一睡の裏 驚くべし決勝線上の亀
と続くのです。私もやっぱり詩吟は怪しい芸能だと思います。



已:すで 麾く:さしまねく 一睡の裏:ひとねむりのうち 
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2012年06月07日

木久扇の蛇含草



NHK日本の話芸で、林家木久扇「蛇含草」を観る。2009年収録の再放送だったと思う。

「蛇含草」は、上方落語の代表的な演目の一つ。
大筋はこんな具合。

 * * *

夏の暑い盛り、甚平を着た男、隠居の家へ遊びに行く。隠居の家には草が吊るしてあって、あれは何かと尋ねると、蛇含草だという。大蛇が人間を飲み込んで腹が膨れて苦しくなったときに、この草をペロペロと舐めると、中の人間が溶けて膨らんだ腹が元に戻るそうだ。魔除けにもなるそうだから、吊るしてあるんだという。へえ、すると蛇の胃腸薬みたいなものですか。珍しいので、男は蛇含草を分けてもらい、収めておく所がないので甚平の紐に括っておいた。

隠居が火鉢を取り出す。湯を沸かすのかと思いきや、餅を焼く。親戚に祝い事があり、餅を沢山貰ったので、駄目になってしまう前に早く食べきらないといけないのだという。
男は餅が大の好物。如何に餅が好きで如何に沢山食べられるかを語り、ここに在る餅全部食べられる、いや、そんなに食べられるわけがない、いやいや、食べられる、なんだと、じゃあ食べてみろ、という具合で売り言葉に買い言葉、沢山の餅を全部食べることになった。
曲芸のようにして調子よく餅を食べていた男(この仕草がこの噺の見所のひとつ)だが、だんだんと雲行きが怪しくなり、残り数個というところでとうとう音を上げ、家に帰る。

男は家で横になったが、腹が苦しくて苦しくてたまらない。苦悶するうちに蛇含草を思い出し、これで腹をすっきりさせようとペロペロ。

隠居、苦しがっていた男が心配になり、様子を見に家を訪ねる。そこには餅が甚平を着て座っていた。

 * * *



蛇含草は胃薬ではなく、人間を溶かす薬だったのである。噺家によって、ここまで説明する人としない人がいて、私は同種の草が出てくる「そば清」でその両方を観たことがある。しない方は10代目金原亭馬生(きんげんてい・ばしょう)で、する方は誰だったか忘れた。(今週のジャンプに金原と書いて「きんばら」と読む人物が出ていましたが、これは実在する名字で正しい読みです)
説明がなければちょっとした考えオチになるが、何しろ代表的な演目なので、大抵の客は草の効用を知った上で聴いている。



 * * *

知っている噺を聴いて何が面白いのだと思うかもしれませんが、噺家によって筋や演出が違ったり、巧拙があったり、日によって出来が違ったり、年齢によって芸が変わってきたり、と見所があるのです。

予め噺を知っておくと、こういった比較が出来ること以外にも、役立つことがあります。客の入った落語会では、サゲ(オチを落語ではこう言う)を言い終わらないうちに客が拍手を始めることがあるため、最後の一言が聴き取れないことがあるのです。私は無作法だと思いますが、これが通の聴き方なのでしょうか。
有名な噺だと中身を知っている客が多く、中でもせっかちな連中はサゲに差し掛かったところで「あーもう終わった終わった」の心境になり拍手を始めてしまう、というのが私の仮説です。人間には年を取るとせっかちになる傾向があるのと、落語好きには老人が多いことが関係していると睨んでいるんだぜ。
落語会に行くと、拍手の中で比較的若い客同士が「え、最後なんて言ったの?」と言ってることがあります。
(文化水準の低い田舎だけの現象かも)
 * * *




木久扇は、男の姿が消えていた理由を説明をしませんでした。
それどころか、男が家に帰ってから隠居が家を訪ねるまでが編集無しで直通。ワープ航法。
冒頭以降は一切蛇含草に触れない。男が蛇含草を思い出すのもペロペロするのも無し。締めはこう。
男の様子を窺おうと、襖を開けると……。

 ガラッと襖を開けてみますと、人間がきれいに溶けて、餅が鉢巻して胡坐をかいておりました。
 蛇含草でございます。


甚平さえ着ていない! ワープ航法で服が脱げた! 鉢巻?
サゲから演目を言うところ(その時々で最後に演目を言ったり言わなかったりする)の間に、ちょっと照れたように詰まっていたので、何事か思うところがあったのかもしれない。

失敗作のようではあるが、考えオチを解するために必要な要素はちゃんと出てはいる。だから、これで最低限の話の組み立ては出来ている。話は破綻していない。
私は何か知らなかったものを見たのかもしれない。何か、凄いものを。




晩年の談志に「落語チャンチャカチャン」というのがある。その昔、「演歌チャンチャカチャン」というヒット曲を繋いだメドレーがあった。その落語版である。古典落語のメドレーで、まったく別の噺との共通点が生じるところでどんどん噺を切り替える。別の噺を入れ込む。童話で例えるとこんなところか。

ヘンゼルとグレーテルが森の中を歩いていると、御菓子で出来た家があり、中には病気のお婆さんが住んでいた。お婆さんの大きな耳や口を不思議に思って尋ねると、その正体は狼で、グレーテルは食べられてしまい、ヘンゼルは慌てて逃げ出した。狼が後を追ってくる。村に帰ったヘンゼルは「狼が来るぞ」と警告するが誰も信じてくれない。やがて狼が来て村は大騒ぎ。それぞれ自慢の家に住む豚の三兄弟は、狼が来たって平気だと高を括っていたが、狼から次々と家を攻略され……。


落語チャンチャカチャンって、「談志圓鏡 歌謡合戦」のイリュージョンから通じているのだと思うのが、どちらも話を広げてゆく飛んでゆく混じってゆく散ってゆく中で、自分の経路所在地が不明になる感覚に揺蕩う愉しみがある。

木久扇がやったことは、この逆で、話を切り詰める噺。
不必要を切り離した世界の実体を、素っ気なく提示する。
その影で、不必要なあれこれに一瞥をくれている。
露骨である。身も蓋もない。
破綻していないから、逃げ場がない。否定できない。



話を切り詰める噺。
考えてみたことがないわけではないが、不意を衝かれた。
私にはこの技法が、すごく寂しくて、怖い。








 追記。

この噺について一日中考えた。
甚平を着ずに鉢巻をしていた餅。
もしかしたら、最初から登場していた男とは別人が食べた餅なのではないだろうか。
鉢巻と甚平では全く違う。これは別の世界で餅を食べ過ぎて蛇含草を舐た鉢巻の男と、この世界の男が入れ替わった可能性を明確に示している。
男が家で横になったところから、襖が開くまでの間、何があったのか一切は不明だ。何かとんでもない、人知の及ばぬラヴクラフト的な怪奇が、或いは「虚無への供物」のワンダランドが発生していたのではないか。
あっ。何だこれは。凄いぞ、これは。
ワープ航法で世界の果てまで行き着いてしまう予感を抱かせ、最後の最後で宇宙的恐怖と反世界へ飛翔してしまった。

 
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2011年11月14日

舟幽霊

舟幽霊を見たよ。最初はわからなかったけど、よく見たら舟幽霊だったんでびっくりした。挙って船縁を掴む姿が浅ましいのなんのって、確かに亡者ですよ、あれは。
また嘘ついてら、って思ってるだろうけど、俺、ちゃんと見たからね。見ちゃったものはしょうがない。

そもそもみんなは、特に若い者ら、舟幽霊って知ってる?
舟幽霊ってのは色々種族がいるんだけど、俺が見たタイプは、舟で海に出てると、海からにょきにょき出てきて「我々は柄杓の無条件譲渡を要求する!」って、ヘルメット被ってマスクして、「要求貫徹」って書いた襷をかけてたのが呼びかけてくるのね。これを催涙弾と放水車で追っ払うという……。まあ、これは大部分嘘なんだけど、とにかく幽霊が海から柄杓を要求するわけ。
柄杓って知ってる? ヒシャク。ラーメン作る時の片手鍋の、手で持つ部分をすごく伸ばしたやつ。それを呉れってさ。

みんな、こんな理不尽な話はないって思うだろうけど、いざそんなの出てきたら、ワー、幽霊ダー、コワイコワイ、ってなっちゃって、柄杓渡すでしょ。渡しちゃうの。
一本でも渡すと、舟幽霊たちみんなに柄杓が行き渡っちゃってる。この辺の事情がちょっとよくわかんないんだけど、なんか自前のを持ってるのにわざわざ要求してくるらしいんだ。食堂でさ、帰る前にテーブルに置いてある爪楊枝を何本か失敬しちゃう人いるでしょ、家に爪楊枝あるのに。あと、家に帰れば箸があるのに、スーパーで惣菜買うと割り箸貰っちゃう。ああいう感じ。

で、柄杓を手にして何すんのかと言うと、柄杓に海水汲んで、海洋深層水ね、舟の中に撒く。ばしゃーん。これを大勢の舟幽霊どもが何度もやるからたまらない。海の水が空っぽになっちゃって、ワ、これじゃ舟が進まない、ってね。うーん、そこまではいかない。海が空になる前に、舟が沈んじゃう。舟に乗ってる人も沈んじゃう。それで死んじゃいます。

海水に人体は浮くじゃないか、と不満気なお利口さんがいるね。あのね、舟幽霊は柄杓持ってるでしょ。人間が浮いてきたら柄杓で叩いて沈めるの。逃げてく人にも届くように、長い柄杓が要るんだよ。

これが舟幽霊。俺はこれを見たの。信じてくれないだろうけど。
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2011年10月28日

特選 本格的な冬が来る前に聞いておきたい怖い話


第一話 「捨てたはずの人形」

Aちゃんの家の押し入れにしまいこんである古いフランス人形を捨てることになった。人形を粗大ゴミに出して家に帰ると、なんとあのフランス人形が押し入れに戻っていて、一言「忍法、変わり身の術」と喋ったそうだ。


*おそろし。げにおそろしき話じゃ。おぬしの家にもこけしだの五月人形だのあるじゃろう。それがもしこんな忍術を使ったら……。今日はこんなこわい話がどんどん出てくるでな、引き返すのなら今のうちじゃ。ほっほっほ。



第二話 「教室に現れた落ち武者の霊」

中学生のヨウコちゃんは、教室に忘れ物をしていることに気付いた。もう夜だったが、宿題をするのにすぐ必要なものだったので、ヨウコちゃんは学校へ忍び込んで教室へと向かった。すると、誰もいないはずの教室に誰かがいる。よく見ると、落ち武者の霊がヨウコちゃんの忘れた英語の教科書を読んでいた。


*まさか教室に落ち武者が居るとは思わなんだ。もしかすると、わしらのよく知っとる場所に、黄泉の国の入り口があるのやもしれぬのう。おそろしいことじゃ。背筋が寒くなってきよったわい。じじいはちょっとかわやへ行ってくるでの。よっ、こい、しょ。ふいー、腰が痛くてかなわん。



第三話 「夜中に出現した老婆」

友達から聞いた話なんだけど、そいつの親戚が、ある時寝苦しくて夜中に目を覚ましたら、お婆さんが自分の布団の上に正座してたんだって。それで、「布団の上で何してるんですか」って訊いたら、「座布団かと思いました。すみません」って言って、スーッと消えたの。なんか、知らないお婆さんだったらしいよ。


*いやいやいや、これまたおそろしき話じゃった。おぬしよ、今夜はもう布団を掛けては寝られまいて。ほっほっほ。強がらんでもええわい、おぬしが少し震えておるのに、じじいはちゃんと気付いておるぞ。
ああ、そうか。うん、すまんの。そこは隙間風が当たるんじゃった。じじいと一緒での、古い家じゃからあちこちガタがきておるわ。村松さんのとこは最近リフォームしたけれど、じじいは金がないからのう、ほっほっほ、ガムテープを貼ったりはするんじゃが、どうもうまくいかんでの。まあ、じじいが生きとる間は何とか大丈夫じゃろと思うのじゃが。
おお、ほんにすまんの、じじいばっかり風の当たらんところにいて。場所を代わろうな。あ、もう帰るのか。そうか。こんなことなら早くヒーターを出せばよかったの。すまんのう、気の効かんじじいで……。年を取るとすっかり頭が鈍くなりおるでな。あ、そうじゃ、カイロがあったから持っていきなさい。あの、どこじゃったかの、確かここか、ここに……。ありゃ、どこいったかの。ああ、わからん……。
あ、帰るか、そうか。今日はすまんかったの。ほんとうにすまんかった。こんなじじいをゆるしておくれ……。
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2011年10月06日

11/10/05

「俺の家の隣、空き家だったろ。」
「うん。」
「そこに幽霊が住み着いた。」
「ははは、嘘だろ。」
「それで引っ越しそば持ってきた。」
「そんな幽霊いるかよ。」
「だって、青白い顔して、体が透けていて、両足が消えてたし……。」
「うわあ、本当に幽霊なんだ。」
「近くに火の玉も浮いてたし……。」
「疑って悪かったよ。」
「そばが美味しかった。」
「それは幽霊の要素じゃない。」
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2011年10月05日

11/10/04

親戚のおばさんの家は、ちょっと山の中に入ったところにあって、近くに家はない。中学生と小学生の子供がいる。
ある日、朝早くから知らないおじさんがやってきて、何だかんだと言いながら家に上がりこんだ。昼前には帰ってくれたそうだが、これが何日も続いた。おじさんは仏壇の前で御経を唱えて居座ったり、不気味ながら一緒に朝食を食べたりすることもあったそうだ。
彼が何者であったのかはわからない。これを家にあげる親戚も、何を考えているのかわからない。
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2011年06月26日

話し声

思い出したので書く。十代中頃の或る日、自分の部屋で机に向かっていると、男女二人の会話が聞こえてきた。声音からしてどちらも歳は二十代中盤から三十そこそこ、声の位置からすると、三角形を描くように私の背後左右にいる。男は少し口が悪く、女はそれを窘めているようだった。男女の短い遣り取りが耳に入ってきてから少し間を置いて、声がするのはおかしいと気づいて振り向いたが、誰も居ない。
私のことを話していたような気がするが、聞いた直後からどんな会話だったか思い出せない。

それから一カ月ほど経った或る日、部屋の窓から外を眺めていると、またもや同じ二人の会話が聞こえてきた。前より距離が近いが、やはり背後の左右からだ。私は当たり前のように一言会話に加わった後、少し間を置いて、これが当たり前ではないことに気付いて振り返ったが、やはり誰も居ない。会話も直後から思い出せない。私は二人に同意するような返事をしていた。

この二回の間にも一度あったような気がするが、あまりに記憶が曖昧だから数えない。テレビラジオ等の音声、近所の会話、そういうものが聞こえてくる環境ではなかった。眠ってもいない。聞こえたことへの恐怖はなく、声が聞こえなくなって今でも残念に思うくらいだ。

最も簡単な説明だと「幻聴」になるだろう。一般に十代中頃というのは精神が不安定だとされているし、当時は家庭環境も不安定であった。精神に変調を来たすことがあっても不思議ではない。
しかし、変調を来たしたというのであれば、もっと幻聴があってもよさそうなものだし、他に異常がないのも物足りない。自分では精神がどうにかなるほどの環境だったと思わない。
もうお解りだと思うが、私はこれが病気であって欲しくないのだ。
病気じゃないほうが面白いので、病気じゃ説明出来ないような要素(出来れば怖くないやつ)があればいいのだが、ない。なんとかなりませんか。
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2011年06月05日

緑色

怖い話まとめブログ
http://khmb.blog92.fc2.com/

ここの「不可解な体験・謎な話」を読んでいたら、思い出した。

今の実家を建てる前、まだ○○堀に小さな土地を持っていた頃。
父はそこに畑を作っていた。元は畑ではなく、石を運び木の根を掘り起し、開墾という言葉がぴったりな作業をしながら、少しずつ少しずつ土地を造り替えて畑にしていった。
私も時折その手伝いをさせられた。小学校中学年だったろう。小石を拾ったり、草むしりをしたり、出来る仕事はその程度で、遊んでいることが多かった気がする。掘り起こした木の根に乗ってグラグラ揺れながら、将来はここにアスレチックを造りたい、と思っていた。父もいづれはそういう遊び場を造ろうかと言ってくれた。

その日は午後、枯草や木に火を着けた。半袖を着ていたと思う。することがなく、煙を避けて辺りをぶらぶら歩いていた私は、或る家の綺麗なブロック塀の側面に妙なものを見つけた。それはまるで練り歯磨きの広告のようにチューブから出した形、深い緑色。長さ3p太さ1cmほどではなかったか。まず最初に、絵の具のようだと思った。しかし絵の具がこんなところに付いているのは不自然だ。芋虫でもなさそう。鳥の糞かもしれぬ。
Y字型の細い枝を拾って、突いてみた。柔らかくて枝先はすぐに刺さる。開くようにして中を見ると、赤、茶、黄などの線が何本か束になって緑色に包まれていたのだった。内臓を連想させる、生物的な質感と水気がある。動く気配はない。人工物とは思えない。これは、これは何だ。
考えてわかるものではない。宇宙人に関係する何かではないか、とも思ったが、多分違うだろう。初めて見る虫か鳥の糞、もしくは食べ残された何かの内臓だと思うことにした。したけれど、腑に落ちなかった。腑に落ちないが、他に現実的な落とし所がなかった。
以後、ああいうものを見聞きしたことはない。不思議ではあるが、きっと説明のつくものだと思う。だから、誰か説明してください。

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2011年04月18日

ぼくのかんがえた遊び「幽霊」補足

前に「幽霊」という遊びを紹介した。そこで「心霊云々の怖い話が好きなわりに霊感がまったくないもどかしさが昂じて生じた、他人を幽霊と決めつける遊び」と書いたが、それだけで出来た遊びではなく、「幽霊」には原型となる実体験があった。

マスコミで鈴木宗男の話題を大きく取り上げられることが多かった十年ほど前、その或る夏の日。
私は一人の知人を連れて、中野ブロードウェイの店に入った。店員が一人、中高生くらいの客の男が一人居て、私が商品を見ていると、客の男がだいたいこのようなことを言った。
「へへへ、鈴木宗男がいなくなっても、アホの坂田で代用できますね、うへへへへ」
独り言ではないはっきりとした声だった。狭い店内の他人、つまり我々に向けて発したと思われる、鈴木と坂田の顔が似ていることに着眼した提言である。私は男が無用の恥に頭から飛び込むが如く急に面白くないことを言い出したので吃驚し、反応に困ってちらりと知人を見た。すると知人は顔色一つ変えず、まるで何も聞こえなかったかのように平然と男を無視しているではないか。私はそのポーカーフェイスに驚いた。人間がせっかく面白いことを言ったつもりでいるのに、無視することなど許されるのだろうか。それは人を人として扱わない、人格の蹂躙ではないのか。しかし、知人と男は何の繋がりもない赤の他人と言えば赤の他人であり、手を差し伸べる義務はないのかもしれない。
私は救いを求めて店員を見た。そして三度驚いたのである。店員もまた、何も聞こえなかったかのように男を無視しているのだ。店員といえば客を迎える側、言わばホストである。それが男に愛想笑いのひとつも見せずに目も合わせず、誰もそこにいないように振舞っている!
私はおそろしくなった。もしかすると、この男の姿が見え、この男の声が聞こえているのは、私だけなのではなかろうか。ならば、この男の正体は、もしや幽霊ではあるまいか……。
君は本当にあの男が見えなかったのか、と今に至るまで知人に訊けないでいる。

これが「幽霊」の原型です。今ではこの遊びがすっかり当たり前になってしまい、原型のほうは忘れていることが多いのですが、今日は思い出したので、書いてみました。
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2011年04月06日

真夜中の訪問者

なんとなく息苦しいような、むずむずするような、不快な気分で、不本意ながら目が覚めてしまった。頭がじんじんと鈍く痛む。枕元の時計を見ると、午前2時。まだ目が覚めてよい時間ではない。しかし眠気はどんどん抜けてきている。意識的に目を閉じていたが億劫になり、これはもう眠れまいと諦めて、カーテンを開け放した窓から差す薄い月明かりに浮かぶ、見飽きた天井をぼんやりと眺めた。
ふと、布団の左側、襖が少し開いているのに気が付いた。おかしい。いつも寝る前には閉めているのだが、閉め忘れていたのだろうか。いや、違う。襖は今まさに、ゆっくりと音もなく開いているところであった。
一人通るくらいに開くと、その奥からこれまた音もなく、青白い老婆が滑るようにして入ってきた。使い古した雑巾のような襤褸を纏い、逆立つように乱れた白髪を風もないのに揺らめかせ、妙に膨らんだ皴だらけの顔でだらしなく口をあけ、ニタニタと笑っている。腰を曲げて、両手はだらりと下げたまま突っ立って、白く光る眼で俺の顔を覗き込むようにして、馬鹿にしたような笑いを―――。

「お前かー!」と怒鳴りつけて飛び起きた。俺の剣幕に老婆もさすがに口を閉じて真顔になり、首を竦めて腰を伸ばした。不快な覚醒はこの不気味な老婆の仕業に違いない。婆め、ただじゃおかねえ。何かないかと辺りを触ったらラジカセに触れたので、それを引っ掴んで婆に投げつけた。ラジカセは差し込んだままのコードが軌道を狂わし見当違いの地点に落下して、婆はそのまま逃げてしまった。


あんなにも気味の悪い婆は即刻殺すべきだ。俺は朝一番で法務大臣に直談判して、不気味老婆の殺人許可を得た。おかげで会社へ遅刻することになり、小さな会社の社内中で嫌な顔をされて俺は腸が煮えくり返り怒髪は沸騰しもう絶対許さん殺すあの婆めぬぬぬぬぬと思いながら夜を待った。ぬぬぬぬぬというのは怒りが言語を絶したのであり、国語の成績が良かった俺の言語を絶するということは、それだけ俺がカンカンに怒っていることの証左である。怒りで頭痛も吹っ飛んだ。夜を待つ間に、スプレー式殺虫剤とライターと木刀を枕元に用意した。殺虫剤を噴霧するガスにライターで引火させ、簡易火炎放射器として老婆に火を点け、木刀で思い切り何度も殴りつける。それを想像すると頭がかっかとして布団に入ったまま一睡もできなかった。

午前2時。昨夜よりも明るい月明かりの中、襖が音もなく開くのを待っていると、意外にもガタガタと音を立てて襖が動き出した。不審に思いつつ俺は起き上り、殺虫剤とライターを手にしたが、入ってきたのは恰幅のいい髭面の中年大男だった。頭に鉢巻、紺色法被姿の職人風で、いきなり俺を睨みつける。
「ばあちゃん、こいつか。」
男は俺を指さして襖の裏へ問いかけた。襖の陰から昨日の青白い婆が恐る恐る顔を出して、こくんと頷いた。婆め、殺すぞ。飛びかかろうと身構えると間髪入れず「かあーっ!」と男が大声を出して両手を振り上げたので、俺は吃驚してその場から動けなくなってしまった。婆は顔を引っ込めた。出てこい婆。
「お前、年寄りに何てことするんだ。ちょっとそこに座れ!」
男に気圧されて、俺は道具を置いて布団の上に正座した。
「夕べのこと、ばあちゃんから話聞いたぞ。お前、何てひどいことするんだ。年寄りを大切にせんか。」
男は腕組みをして叱りつける。誰だよお前。
「ばあちゃん、ここはおれがよく言っとくから、今日はもう帰りな。ちゃんと叱っておくから、大丈夫だから。気を付けて帰りなよ。じゃあな、またな。」
男は襖の後ろの婆に声を掛けると、俺の方を向いて胡坐をかいた。婆の返事はなかったが、襖が音もなくするすると閉まったので、帰ったのだろう。
「若い者みんなで年寄りを大切にしなきゃいかーん! いかんぞー!」
襖が閉まるなり、男は拳で畳をだんだん叩きながら怒鳴った。何だよこいつ。帰ってくれよ。男は俺の気持ちを汲む様子もなく、唐突に自分と祖父母との思い出を語り始めた。要約すると、年寄りから色々な事を学びとても世話になったという話で、近所の年寄り(その一人があの婆)からも可愛がられて、釣りに行ったとか、みかんを貰ったとか、そういう、つまらない話。つまらないが、俺はこいつに一刻も早く帰ってもらいたいので、相槌を打ちながら大人しく聴いた。子供時代で始まった男の話は現在の自分の在り方に到達し、政治経済や時事問題にまで浅く及んで、そろそろ終わりの気配が見え始めた。俺は婆を一時間くらいで殺してから朝まで寝ようと思っていたのだが、予定が狂って外はもうすっかり明るい。
「お前もよく反省しているようだから、今日はこれくらいにしといてやる。次来たときは年寄りが喜ぶ肩叩きのコツを教えてやるから、それでばあちゃんのところへ謝りに行ってこい。ちゃんと頭を下げてあやまるんだぞ。」
また来るのかよ。とにかく今日はこれで帰ってもらえるようなので、げっそりはしたがほっとした。もう寝ている時間はないので、このまま出社しなくてはいけない。どうにか午前中持ちこたえて、昼休みに仮眠を取らなくては。
立ち上がりかけた男が、枕元を凝視して動きを止めた。視線を追うと、木刀が転がっている。男の顔を見ると、目が合った。
「お前はそんなもの持ち出して、何をするつもりだったんだー!」
そのまま夜中まで物凄く説教された。殺虫剤とライターの意図に気付かれていたらまだ長引いただろう。カーテンを開けたままだったので、たまに道行く近所の人が、塀から頭を出してこっちを覗いているのがわかった。

男が帰ってからも俺は会社を無断欠勤して、悲しいやら悔しいやら恥ずかしいやらでずっと泣いている。何故こんな目に遭わなければいけなかったんだ。俺は勝手に入ってきた婆を追い返しただけで、大臣の許可もちゃんと取ったし、何か悪いことをしただろうか。頭の中がぐちゃぐちゃで、取り敢えず引っ越そうとは思うのだが、それから先のことは何も考えられない。何も考えたくない。お腹空いた。

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2010年12月14日

おばけ追記




前に書いたおばけの話。夢だろうが現実だろうが、この話は子供の頃から何度か他人に話していて、小学校へ上がる前の記憶というのだけは明確な事実。姿が不明瞭で、意図も不明で、行動が無意味で、ただただ恐ろしい。
あれが想像の産物だとして、未就学児童の発想にしてはかなり高度であると思う。今でこそネットの体験談等でこの手の怪異は確立しているが、当時、子供の知る怖い話にこのようなものはなかった。もう少し年齢があがって、それでもまだ未就学児童だったころ、実しやかに囁かれた怖い話がこんなのである。

・異次元への誘い
幼稚園内に小型の体育館のような部屋があり、隊列や陣形を整える基準を示すテープが幾何学模様を描くように床へ貼られていた。その部屋に一人でいると、テープで作られた図形の幾つかが異次元への入り口になり、引きずり込まれるのだという。
或る日、その部屋を使ったあとの給食時間、部屋からひとり遅れて帰ってきたH君は「実はさっき異次元に連れて行かれそうになったんだ」と私に打ち明けてくれた。図形の中から何本も手が伸びてきて捕まったが、何とか逃げ出したのだという。

・催眠術師
紐で吊った五円玉を揺らし催眠術をかけるおじさんが現る、という噂話。

・死人の出た川
幼稚園近くの川では、警官に追われた泥棒が飛び込んで溺死した、らしい。

・恐怖のカッター男
深夜、幼稚園近くの小学校の壁に異次元の穴が開いて出てくる。
通っている姉が背中と足の裏を切り付けられた、と友人E君から直接聞いた。



私が見たおばけについて、母へ憶えているかどうかを訊いてみたことが何度かある。
毎度はっきりとは答えがなかったような気がする。(子供の頃には「そういうこともあったね」と答えていたような気もするが、この記憶が事実なのか私の願望なのか判別がつかない。多分後者であろう)
最後に訊いたのは10代の頃か。
先日改めておばけのことを訊いてみた。母は全く記憶にないという。
これをもって、それ見たことかヨシノブの夢だったのだよ、と断ずることなかれ。母はこれまで何度か同じ質問をしてたことも記憶になかったし、私の幼少時の一大事であった「昼寝から起きたら目脂で瞼がくっついて開かなかった」事件のことも記憶になかった。母の記憶は当てにならないのである。
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2010年11月23日

犬にぞっとしたことが三度ある。三度目。




小学五年の時。
Y君の家の近く、田圃ばかりで夜の真っ暗な細い道を、両親と私は軽自動車でのろのろと走っていた。何かが道を横切ろうとしたのが目に入ったので停車すると、そこにいたのは異様な犬である。
薄汚れているが元は真っ白と判る長い毛、顔はコリーに似ているがそれよりもっと長く、説明し難い顔つきで、変な表現になるが、狸が混じったような「獣」の顔をしていた。こちらにあまり興味を示さず平然と車の傍を歩いて行く。体が大きく、車の前を通ってもボンネットから首が出ている。
通り過ぎたのを確認して車を走らせた。
あれは何だったのだろうと家族と話していると、近頃あの辺りで白い大きな犬が出ると少し噂になっていたのを思い出した。今に至るまであんな犬は他に見たことがない。
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2010年10月25日

おばけ

私の所有する怖い話のうち、最も印象深いやつを過去書いたように思っていたが、その文章がどこにあるのか見つからないので、今日はその話を書こう。私はよく嘘を書くけれど、今日のは本当の話。


私は小さな頃から怖い話が好きで、民話の妖怪話から学校の怪談までその手の本をちょくちょく読んでいた。ネットを始めてからは、怖い話を集めたサイトをたまに覗いては怖くなっている。
10年くらい前から、ネットでの怖い話に「くねくね」と称される類話群が出現するようになった。一例を簡潔に再構成すると大体次のような話である。

遠くの山を見ていたら、真っ白な人のようなものがいて、手足をくねくねと踊るように動かしている。動きは異常である。何者かわかならい。知人がそれをじっと見て何者かわかったと言うが、何なのか教えてくれないまま、やがて気がふれてしまう。

これが水辺に出現したり、黒かったり、見ているところを土地の者から止められたりと、話によって仔細は変わってくるのだが、骨子は人の形をしたくねくねと動く何者かがいて、それを見ていると精神に異常を来たすということである。
話が実に簡単で不気味。


さて、私の怖い話である。小さい頃にお化けを見たことがある、というだけの話だ。
その日、どういうわけか夜の九時という幼児には遅い時間を回っても、私は布団に入っていなかった。父はもっと遅い時間にならなければ仕事から帰って来ず、家には私と母しかいない。母から追い立てられ寝巻に着替えて寝室に入ったが、私は眠くなく、掛布団の上に寝てみたりうつ伏せに寝てみたりとふざけていた。母が怒って、いつもは豆電球を点けて寝るのに、電灯を全部消してしまった、その途端。
寝室は襖を閉めて窓もなく、明るい居間から離れているし、廊下の明かりは普段点けず、何処からか明かりが入ってくるということがない。だから、真っ暗になる。真っ暗で何も見えないなか、私の正面、壁に寄せてある箪笥の前あたりに、誰か居るのが見えた。暗闇よりも、そいつはもっと黒く、人の形にただただ黒かった。そのはっきりとした輪郭から、若い大人の男だと思った。
そいつは手足を激しく振っている。屈んだり、跳ねたりはしない。その場から動かずに、踊るというには出鱈目な動きで、とにかく手足を振っていた。感情は伝わってこない。何の音もしなかった。
私は恐怖で泣き叫び、布団を被って母に詫びて明かりを乞うた。明かりはなかなかつけてもらえない。やっと点くと、母は平然としていた。この後のことは記憶が曖昧でよくわからない。

それは夢を見ただけじゃないのかという疑いには、有効な反論が出来ない。そうかもしれない。夢と現実のどちらにしろ、「見た」のは間違いない。
似たような話を聞かないまま随分経って、くねくねを知った。くねくねは人気を博して類話が幾つも出来た。ネットに先駆けてあれを見ていた私は、なかなかセンスがあると思う。
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2009年06月19日

今週のショッピング情報

では、どこが可笑しいのだと自問してみた。
顔をプリントすること自体は、珍しくない。ただ、これは大きすぎる。
大きすぎることの存在感が、生きているかのような気配に繋がっている。
これが、音楽室のベートーベンやバッハの肖像画と並んでいる様子を想像してほしい。「夜中に目が動く」と、間違いなく七不思議の一つになろう。


http://joins.fashionmil.co.jp/goods/item_view.html?gCode=304632


諸星大二郎の「アダムの肋骨」に出てきた、体に大きな顔がある鳥を思い出して、何だか不安になる。
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2008年03月24日

今週の妖異怪録図絵

アンバサの怪

岩手県のとある民家で毎晩どこからか物音がするのを家人が怪しんで調べてみると、台所の床下収納庫から飲まずに忘れていたアンバサが見つかった。冷蔵庫で冷やしたあとに飲んでみるとそれ以後は夜の物音がぱったりと止んだという。同様の例は全国各地に見られる。
これは付喪神の一種といえよう。アンバサが長年飲んでもらえずにいるのを恨んで物音で己の存在を知らせたのだ。似た妖怪にタンコロリンというのがいる。見知らぬ大男が柿をぽとりぽとりと落として歩いてゆく。あとをつけると、とある家の前でふっと消えてしまう。不審に思って調べてみると、その家には実るがままに実をつけていた柿の木があったのだが、いまやその実が消えている。実が重かったのか、誰かに食べてもらいたかったのか、柿の木が化けて出たのであろうということだった。
アンバサも放っておくとゆくゆくは何者かの形になって、「白いおいしさ」を飲ませ歩いたのかもしれない。
なお、怪異を引き起こすアンバサは、どれも1990年以前に製造されたものばかりだそうだ。

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2007年12月01日

特選 秋の夜長の怖い話

第一話 「ふたつ置かれたおしぼり」

ひとりでファミレス行ったんだ。入り口のところで何名様ですかってきかれんじゃん。ひとりって言うじゃん。そしたら、店員なんか妙な顔してるの。で、席に通されたんだけど、おしぼりを俺のところと向かいの席に置くんだよ。変だなーって思って、向かいの席のおしぼりをよく見てみたら、おしぼりじゃなくて人骨だったので驚いた。


*秋というにはちっとばかり過ぎてしまったがの、これをやらんと冬の怖い話ができんのでな、無理を言ってこれをやらしてもらったんじゃ。どうじゃ、若い者ならたまにはファミレスに行くのじゃろう。しかしこれ聴いたらもう怖くてファミレス行けんじゃろが。なんと。ほっほっほ。強がりを言うのう。




第二話 「今夜は何を」

友人に霊が見える女の子がいます。よく○○の○○あたりで、酒に酔った金子信夫の霊が見えると言い張ります。


*この、寸でのところで場所が伏せられておるというのが、何ともいえず怖いのう。自分の近所と思ってみい、身近に霊がおるというわけじゃ。今だって、振り返れば霊がいるかも知れんぞ。ほっほっほ。ときに、かわやはもう済ませておるかいの。じじいの怖い話はたんとあるでの、今のうちに済ませておくが吉じゃぞ。




第三話 「廃屋に消える」

町外れに、もう何十年も前から人の住んでいない廃屋が一軒ぽつんと建っている。もともとは幼い姉妹と両親の四人家族が住んでいたらしいが、家財道具を残したまま、ある日突然姿が見えなくなってそれきりなんだそうだ。
あるとき、肝だめしと称してこの廃屋へ入り込んだ連中がいた。連中は興味本位で部屋を物色したが面白い物が見つからず、とうとう畳まで剥がしてみることにした。そして床板も剥がすと、そこには大きく口を開けた井戸があった。みんなで覗きこんでいると、急に背中を押されてみんな井戸に落ちて死んでしまった。


*これはの、じじいの知ってる話の中でもかなり怖いやつじゃ。ちと怖すぎたかのう。
そんなに怖くないか。そうか、面白くないか。そうか、うん。じじいじゃからの、若い人が喜ぶような話題がわからなくての、怖い話なら好きじゃろうと思うてがんばってみたんじゃが、そうか。
すまんのう、じじいは若い人と話がしたかったんじゃ。じじい友達おらんから、毎日寂しくてのう。年寄り連中とは、ほら、じじいは村松さんから嫌われとるから、誰も仲ようしてくれんのじゃ。
ほっほっほ。つまらん話を聞かせてしまって悪かったのう。もう、帰るでな。おお、そうじゃ、じじいの与太話に付き合ってくれた礼に、小遣いをやろう。少ないがな、ほら、ええからええから。なあ、受け取ってくれ。頼む。さあさあ。うん、ありがとう。
さて、じじいは帰って寝るべかな。じじい楽しかったよ。じゃあの…。

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2007年08月18日

特選 真夏の怖い話

第一話 「ショルダーバッグ」

夏休みは学校がない!
とはいっても、登校日というのがある。面倒だけれど友達と会えるし授業はないので、トオルはその登校日にも元気に家を出た。「いってきまーす!」
ただ、トオルにはひとつだけ不満があった。
それはランドセル。
今日は筆箱しか持っていかなくていいし、先生からプリントをもらうだけなのに、わざわざランドセルでこなくちゃいけないというのがトオルの学校のきまりなのだ。トオルはせっかく夏休みなんだからショルダーバッグでもいいじゃんと思っていた。まだ持ってないけど、登校日がショルダーバッグでもよくなったら、デパートでかっこいいのを買ってもらおう。

その時!

ドーン! ガガガガガガガガガ、バババババババババ! 

トオルは大きなトラックにはねられてしまったが、そこにはトオルの死体はなく、かっこいいショルダーバッグがひとつ落ちているだけだったという。それからトオルの姿を見たものはいない。


*ほっほっほ。どうじゃ、こわかろう。トオルは何処へ行ってしまったのかのう。そしてあらわれたバッグは何を意味するのか。
わからん。この世はわからんことばかりじゃ。こわいのう。今のうちにかわやへ行っておくのじゃ。



第二話 「落ち武者の霊」

わたしの学校には、落ち武者の幽霊が出るという噂があります。
ある先輩は、その落ち武者の幽霊が校庭に立っているのを見たことがあるそうです。


*いったいどこから落ちのびたのか、何用あって学校の校庭に出るのか、さっぱりわからんが、こわいのう。聴いているだけで、こう、背筋がゾクゾクしてくるじゃろう。じじいは今一度かわやへ行ってくるぞ。年を取ると小便が近くなってしまってどうもいかん。なに、近いのはお迎えじゃないのかだと。ほっほっほ。そのとおりじゃ。お迎えのほうはいつ来なさるんかのう。



第三話 「夜中の笑い声」

ある夏の暑い夜、寝苦しくて目がさめた。時計を見ると2時ちょうどだ。
顔を洗ってさっぱりしようと洗面所にいき、顔を洗った。
タオルで顔をふいていると、こんなに暑い夜なのに、首筋を冷たい風が吹きぬけた。
びっくりして辺りを見回すが、何も変わったことはない。
少しこわくなって、急いでベッドにもどった。
眠気はさめてしまっていたが、目をつむっているとだんだん眠くなってきた、すると外から遠くで誰かがワハハと笑う声がしてきた。
あの時ワハハと笑ったのが誰か、今でもわからない。
朝になって目が覚めると、超能力が使えるようになっていた。


*誰が笑っていたのか、家族にきいてみても誰もその声を聞いていなかったそうじゃよ。ほっほっほ。よく寝てらしたのじゃろう。
超能力を使っても誰の声かわからなかったようじゃから、ふしぎじゃ。こわいのう。
さて、じじいは何だか死にたくなってきたぞ。もう生きてるのがどうでもよい。長生きしたが、いいことなんかあんまりなかった。こわい話はまだまだあるが、もう疲れたのでな、また今度じゃ。なに、そのまえにお迎えが来ちゃうかもだと。死ねっ、くそガキ。年寄り馬鹿にすると容赦せんぞ。
なんだ、その目は。あまりふざけてると、やるぞこのヤロッ! 馬鹿ガキめが。
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