2016年07月16日

16/07/15



「もしも明日、世界が終わるとしても、私は林檎の木を植えるだろう」

なんて世界最後の日が来ても自分はいつもと変わらぬ一日を過ごしますよ、って
言う人がいるけどね、もうね、俺はそのような油断しきった将来計画を提出して
事足れりと思っている輩は信用ならぬ。

最後の一日の前の日に、ネットで天気予報とかニュースとか見るでしょ。
ブックマークからリンク開いたりするでしょ。
そんで、ひょんなことから女装子のツイッター見てたら、アップされた
女装写真が振られた女に似ていて、そりゃもう、君、あのね、
林檎の木どころじゃないんだよ。
角度がね、今まで気付かなかったけどこの人、この角度から見ると
ちょっと似てるんじゃないか、と。あれれ、似てるじゃん、と。
それが尻だの乳首だの出しとるわけでしょ。
取り合えず布団に寝転んで、落ち着いてからもう一度写真見て、
やっぱ似てるな、って再確認。林檎の木なんかどうでもいい。
ピーマンとツナでおかず作って、炊飯器仕掛けて、
後はもう寝るだけよ。
明日、もりもりご飯食べるために。


こうして迎えた世界最後の日を、君は林檎植えて過ごしますか。
これは君の話なんですよ。
もりもりご飯食べて後は一日中寝るでしょ。寝とけよ。
起きてたって死にたくなるばかりだぞ。

世界最後の日がもっと早くきとけば良かったな。
posted by ヨシノブ at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月09日

老婆とバスの運転手

「あのう、ちっと物を訊ねますが」
「はい、なんでしょうか」
「このバスは、アフリカまで行きますか」
「あふりか?」
「AFRICA」
「アフリカまでは行きませんよ。次の、山川営業所前で終点です」
「アフリカまでは行かないのですか」
「行きません」
「あらあら。でも、この空は、アフリカまで繋がっていますよね」
「ええ、繋がっていますよ」
「うんんん。む、うむむむむむむむむうむうむうむうむ……」
「どうされました」
「空を掴んでツーっと向こうまで行って戻ってまいりました」
「お婆ちゃん、アフリカにお知り合いでもいなさるんですか」
「ええ、まあ。実は、うちの本家が三代前に家系図を失くしましてね。もう諦めておりましたが、最近になって倉の整理をしたところ、それが見つかりまして。先日、本家に一族を集めた報告会が開かれて、今日はその帰りなのです。
身内の自慢をするようでお恥ずかしいのですが、立派な家系図でしてね。御先祖様の最初から三代前まで、ずうっと書いてあるのです。壮観ですよ。
どこに住んでどんなことをしていたかなんて添え書きもありましてね。御先祖様を辿ってゆくと、もとはアフリカの出だと書いてあるのです。噂には聴いていましたがね、まさかと思いましたよ。でも書かれていますからね、アフリカなんです。
わたしはまだアフリカに行ったことがありませんから、アフリカにある御先祖様の御墓参りにも行ったことがなかったんです。それで今、行ってまいりました」
「その家系図には、最初の御先祖様から御名前が書かれているのですか」
「ええ、そうです」
「つまり、人類の始祖の御名前ということですか」
「そうなりますね」
「もしかして、その御名前は……」

 私はそのよく知られた御名前を出す前に、一瞬言いよどんだ。
 これは人類史の最初を問い質す、とてつもない確認なのである。

「……アダムとイブ、ではありませんか」

老婆は一瞬真顔になってから笑い出した。

「……ふふふ。嫌ですよ、うちの家系図は宗教書じゃないんだから」
「あ、ははは。では、何という御名前なのですか」






この一族は、まだ言葉も文字も無い時代、まだ名前という概念もない時代から、代々その名前―――存在の認識を示す証―――を伝えて来たのだ。
ヒトの短い時間で結んだ長い長い時代を、言葉とは言えぬ鳴き声に始まり、文字とは言えぬ記号を経て、現代に到る家系図として、未来へ向けて伝え続ける。

人間がいた、ということを。

posted by ヨシノブ at 04:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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