2014年08月31日

14/08/30

お前よー、いっつも豚みたいな顔してるよな。
豚かよ。
お前、豚なんじゃねえの。
ブーブーって言ってみろよ。ブヒって言えよ。
お前が豚ならよー、お前の肉は豚肉だよな。それに、お前の骨は豚骨なんだよなー。
お前の体は豚骨を秘めた豚肉ボディで、その全身を流れているのは豚骨スープに他ならないんだよなー。
おい、豚。
天使かよ。お前、豚肉豚骨大大だ〜い好きの俺の前に舞い降りた天使なんじゃねえの。
……何とか言えよ、この豚野郎!


3年後、俺たちはオランダで同性婚した。
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2014年08月29日

晶子


反戦歌人であるかのように扱われる与謝野晶子の戦争に纏わる幾つかの句を読むと、非常に率直素朴な個人的感情で、現代でよく言われる「反戦」とはちょっと感覚が違うのではないかという気がしている。



IWJ Independent Web Journal
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/149739
↑ここのコメント欄の下の方でそういうことを指摘している


私は晶子の句の殆どは読んだことがないから、晶子に反「反戦」的な句と評価されているものがあるのか知らなかったが、晶子は軍国主義を湛えるような歌も詠んでいると専門家が述べている記事を見つけた。


与謝野晶子の未発表歌「秋風や いくさ初まり港なるたゞの 船さへ見て悲しけれ」が発見されたという東京新聞の記事(現在消失)より、和歌文学研究者で日本文芸学会常任理事の入江春行さん(86)の指摘

入江さんは「中国をやっつけろと盛り上がる世論の中で、悲しいと詠む歌は発表できなかったのだろう。晶子は一見軍国主義をたたえたような歌も詠んだが、この歌は根底に反戦の思いがあったことを暗示している」 と指摘している。





軍国主義をたたえたような歌も詠んでいて、その思想・心情の真のところ、つまりどのような「反戦」の人であったかは、今や誰にもはっきりとはわからない。
だからね、今の人が「反戦」を訴える時に『君死にたまふことなかれ』を掲げるのは、やめといたほうが良いんじゃないか。
どんな歌を詠んだかという事実から見れば、「いまは戦ふ時である」なんてのも詠んでいるわけで、現代の心底「反戦」の人は、晶子がちょっと違う感覚でいる可能性を考慮して、彼女からは距離を置くべきだと思う。晶子がいなくても「反戦」は訴えられる。
(「君死にたまふことなかれ」と口にした後に、「いまは戦ふ時である」なんて返されては台無しでしょう)
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2014年08月26日

今週の地球最強王座決定戦


 カブトムシ VS イソギンチャク




遥かに広がる大海原。その端っこ、磯が今回の闘いの舞台です。
夏の昆虫人気ナンバー1、カブトムシが今、磯に降り立ちました。対戦相手のイソギンチャクは既に海中へ潜んでいます。一体、どんな激闘が繰り広げられるのか。

さあ、制限時間いっぱいです。試合、開始!
カブトムシ、じっとしております。潮風に敵の気配を読んでいるのか。少し動きました。足場を確かめているようです。動きが硬い。慣れない環境に緊張しているのか。
一方、イソギンチャクはいつカブトムシが飛びこんできてもいいように、触手を揺らめかせています。こちらの動きに硬さはありません。ホームグラウンドとあって精神的にも優位か。ただ、カブトムシの堅い体、足のギザギザ部分、パワーにどこまで通用するか、まったくの未知数です。柔よく剛を制すとなるか。

カブトムシ、海水面に近づいていきます。
ああっ! 打ち寄せた波の飛沫がかかった!
カブトムシ、動きが止まった。どうだ、雨ならば知っているカブトムシですが、海水の洗礼を受けて、それでも闘えるのか。
カブトムシ、ピクリともせず。しかし、立ち往生という雰囲気ではありません。まるで、イソギンチャクよりも先に海という戦場について冷静に分析しているようです。力だけではない、知力も備えたカブトムシです。

さてイソギンチャク、急いで襲いかかるような気配はありません。優位に驕ることなく、冷静に勝機を窺っている、そのような雰囲気です。

両者、相手の間合いを避けるように距離を取っています。カブトムシ、未だ海中に入りません。イソギンチャク、どっしりと構えて一歩も動かない。一度も接触していない分、闘気と闘気でぶつかりあってるかのような緊迫感が磯を包んでいます。

また、波の飛沫がカブトムシにかかりました。カブトムシ、やや後退します。
イソギンチャク、波の大きさに合わせて触手も大きく揺らめく。
青い空と青い海に挟まれた、息詰まる熱戦です。勝利を手にするのは、果たしてどちらか……。


あーっと、ここで時間切れ。試合終了です。
達人同士の深い読み合いが繰り広げられましたが、勝敗つかず、引き分けとなりました。


次回はクロコダイルVSイトミミズ、駐車場脇の排水側溝での決戦をお送りします。乞う御期待!
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2014年08月23日

14/08/22


ヨシノブの脳と思われていた部分、ミミズの塊

こいつ頭がどうかしてんじゃないのか死ねと思われているヨシノブの脳を検査するために頭を開いてみたところ脳ではなくミミズが団子状に絡まった塊がふたつうねうねしているだけで脳は既に存在していないことが判明し関係者はやっぱりそうだったのかと思って寝た
今でこそミミズ有り脳無しであるものの遠い昔には脳が入っていた痕跡がありヨシノブは今でも脳があるつもりでピンピンしているが生活がお先真っ暗で直に死ぬだろうからこのことは黙っておいてやろうと人類史上最大級の優しさで関係者は寝ている
きっと素敵な夢を見ているのだろう
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2014年08月22日

14/08/20


共学の高校に通っている。講堂よりも広い教室に椅子と机を並べている。
連日のように殺人含む不気味な予告とその実行がなされる。犯人も目的もわからない。
今日は或る女生徒の肉でトンカツを作るという予告があり、名指しされた女生徒Aが泣き出さんばかりに青ざめている。この女性とは一連の事件を面白がっている女生徒Bの取り巻きの1人で、Bはせっかく指名されたのに怯えるとは何事かとAを叱りつけている。何故かこの事件に陶酔しているらしい。
私が少し教室を出ているうちに、私の鞄へ、太腿、二の腕などからどのように肉を切り取るのかを図解で説明する予告状の続きが入れられていた。
ちらりと見ただけで内容の生々しさがわかったので、それ以上は見なかったが、その紙を机に置いていたらクラスメイトが輪になって仔細にそれを見ていた。
一連の事件には恐怖よりも、この生々しい気持ち悪さが強い。
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2014年08月20日

14/08/18

 ヨシノブ、墜落死

セロテ星人の円盤型宇宙船の真下から出る光に引き上げられてアブダクションされそうになったヨシノブでしたが、船内まであと1mというところで宇宙船がバッテリー切れを起こして光が消え、ヨシノブは地上約30mの高さから墜落、死亡しました。
ヨシノブが船内に無事収容された場合、尻子玉を抜かれた後に解剖され解体新書みたいな本が書かれる予定でしたので、どっちみちヨシノブは死亡していました。
セロテ星人は潰れたヨシノブの姿を一応写真に収めた後、バッテリー充電の為にセロテ星へと帰りました。
「また来る」と言っていました。

セロテ星は地球から5000万光年離れており、彼らの宇宙船は最高時速60kmほどであることから、専門家はセロテ星人が大変気の長い性格をしている可能性が高いと指摘しています。
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2014年08月18日

14/08/17


私は高層マンションの357階に住んでいる。部屋には当然窓があり、不意に、この窓から勢いよく飛び出す自分を想像することがある。壁をポーン、ポーンと蹴って、爽快に着地できるような気がして飛び出す、という想像なのだが、常識的判断として実際に死ぬのはわかっている。
私がここにあと100年住んだって、窓から飛び出すことはないだろう。死ぬから。しかし、いつか爽快に着地できるような気がして、頭が常識を持ち出す前に体が動いてしまって飛び出すんじゃないかという不安がどこかにあって、ぞっとする。


私はまったく悪くないがセコムの警報みたいのが鳴った。
人が腰を抜かすのを間近で見る。
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2014年08月16日

全然知らなかったんだよ



人生の上限が見えるっていうのかな、仕事が長続きしないし、あんまり金ないし、何にも期待できることがなくて、なんかもう人生が上向きになる要素が何もないのがわかってしまった。
金さえあれば、人生がかわる。
でも、その金を持ってくる才知ってのがないんだわ。宝くじなんて当たるわけないし、もう裏技使うしかない。それで、銀行強盗やった。

なるべく捕まらないように、まだ一度も行ったことのない、かなり遠い土地まで行ってさ、銀行を探して、包丁と袋持って突撃したんだよ。そう簡単に成功するわけないって思うだろうけど、こっちは切羽詰まっているから鬼気迫るものがあったんだろうね。包丁振りまわして怒鳴ったら、向こうもすごく驚いてくれて、その分ちょっと手間取ってたけど、袋いっぱいに札束詰め込んで貰えた。
銀行出て、用意しておいた服に着替えて、行きとは違うルートで遠回りしながら家に帰った。何日かかけてね。銀行の金には一切手を付けていない。袋を開けもしなかった。ほとぼりが冷めるまで使うわけにはいかない。まあ、10年くらいは寝かしとくつもりで。

それから毎日、ニュースに目を通した。でも、俺がやった銀行強盗を伝えるニュースは一度も見かけなかった。
何か他に大きなニュースがあったわけでもないのに。
不思議というより、不気味だった。

しかしまあ、そんなものなのかもしれない。世の中のすべての事件が報じられるわけではない。
大きな銀行ならば必ず報じられただろうが、俺が入ったのは名前もよくわからない小さな銀行だった。規模に比例して扱いも小さく、紙面や画面に出る程ではないのかもしれない。もしかしたら、警察は極秘ですごく大きな事件を捜査していて、マスコミも極秘でそれを追っかけていて、小さな強盗にはあまり構っていられないのかもしれない。


10年後にはこっそり大金持ちになるんだ!って思うと生活に張りが出て、そのうち、もっと上を目指そうという上昇志向も芽生えてきた。
つまり、もう一度銀行強盗やってやろう、という意欲だね。
やり方も、あの銀行なら騒ぎにならないってのもわかったし、もう一押しやってみるか! と。
一度押しかけている分、向こうも今度は手順がわかって手早く札束詰めてくれるかもしれない。
いいぞ、これはいけるぞ。最初の強盗は不安と緊張でいっぱいだったけど、二度目はすごくわくわくしていた。裏技で攻略法をマスターした感じ。

それで準備を整えて、記憶を頼りに意気揚々と同じところに行ったんだ。
そしたら、銀行のあった建物が廃墟になってるんだよ。あ、俺が強盗に入ったせいで潰れちゃったんだ! ってびっくりして、よくみたら前回からまだ半年くらいしか経ってないのに、荒廃具合がそんなものじゃない。
近くをのそのそ歩いてた婆さんに声かけて、適当な世間話から「あの建物って何があったんです?」って訊いてみたんだ。「あの銀行潰れたんですか?」とは訊かないよ。遠回りに訊くよ。もしも警察の捜査がこの婆さんに及んだ時、銀行を気にかけていた男がいたなんて言われたら嫌だからね。
そしたら、婆さんは銀行の支店だったと言う。それはいいんだけど、もう20年近く前に大手の銀行と合併して支店も移転、あの建物は以来閉鎖されたまんまだと言う。
そんなわけないんだよ、俺が半年前に強盗したんだから。確かにここだった。一応、支店の移転先も見に行ったけど、そこは初めて見る場所だった。絶対にこの廃墟こそ、俺が包丁持ってった建物なんだよ。

すっかりわけわかんなくなって、遠回りもそこそこに急いで家に帰った。
まだ開けていなかった袋を開ける。もしかしたら全部夢で中に札束もないんじゃないかって少し不安になったけど、中身はちゃんと札束だった。じゃあ、あの廃墟はどういうわけなんだ?
考えてみたが、わからない。しかし、冷静になって考えてみれば、あの銀行があろうがなかろうが、ここに大金があるってのが重要であって、強盗はまた小さな銀行を見繕って飛びこめばいいのだ。
金はある。それでいいじゃないか。
札束を見ていると、何か変な感じがする。こんなに沢山の金は持ったことがないから、感覚がおかしくなったのかなって最初は思った。ゲシュタルト崩壊みたいな。
束から一枚引き抜いて、注意深く見てみる。すると、日本銀行券って書いてある部分が、日本霊界銀行券になっていることに気付いた。他の札も調べてると、全部そうなっている。偽物を掴まされたのか。しかし、この手触りや細工の精密さは何だ。自動販売機のような機械には使えないだろうが、人間相手なら使えるだろう。わざと偽札を使わせて、その流通範囲から俺を絞りこむつもりか。いや、そんな捜査が出来るわけはない。
明らかに偽物だけど、作りが精巧過ぎる。これは元々何に使う金なんだ。
その時、部屋のドアが開いて警察が踏み込んできた。「霊界警察だ! 銀行強盗容疑で逮捕する!」




自分でも知らなかったが、俺は1年前に死んでいた。
ところが死んでいたことを知らなかったので、現世と霊界を無自覚に行ったり来たりする中途半端な存在になっていたようだ。
強盗に入ったのは霊界で、ニュースや廃墟を見ていたのは現世。霊界の方では強盗が結構大きなニュースになっていたらしい。俺が現世と霊界をうろうろするので、捜査は難航したという。
こんなことって、あるんだね。
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2014年08月14日

今週の収支報告



先月は「俺の屍を越えてゆけ2」が発売されました。
このブログからも予約が入っていて、それを見つけた時には歯ぎしりしたものですが、いざ蓋を開けてみると、なかなか不評の声が大きいようです。
不評を読んだ限りでは、私もこれは受け入れ難いと思うでしょうね。前作ユーザーからすると異物のような人物があらすじにもシステムにも深く食い込んでくるとなると、そのどちらかを無視した遊び方も出来ないわけで、これはもう別物として出すのが良かったのではないでしょうか。
不評に対する制作者の発言も、感度がちょっと鈍いですね。

前評判は高かったのにね。蓋を開けてみるまでわからないものです。
この「蓋を開けてみるまでわからない」という表現の由来は知りませんが、実に『シュレルディンガーの猫』的で面白いと思います。


「俺の屍を越えてゆけ2」の出来にがっかりしたのならMVPあげます。どうでした?





「蓋を開けてみるまでわからない」に猫とは別の由来があるとすると、最初にこれを言いだした人が蓋を開けた時の中身は何だったのだろうか。その容器にラベルがついてなかったのか、ラベルとは別の物が入っていたのか。

開けてみるまでわからない。
つまり、蓋を閉めるとわからない。
俺が容器の中に入って蓋を閉めた時、俺は一体どうなってしまうのだろうか。
「なんだかわからないもの」になっているような気がする。
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2014年08月12日

ウォー・ゲーム


ウォー・ゲーム  フィリップ・K・ディック短編集2
仁賀克雄 訳

1冊くらいは読んでおかなければ、と思っていたディック。まずは軽そうなものを、と選んだ短編集。
15年くらい前に買って、最近漸く読んだ。

硬いSFという先入観があったので、「パットへの贈り物」のユーモアが意外。高次元存在が下位次元に降りて神となる展開も気にいった。
「探検隊はおれたちだ」 最後に明かされる事実による哀しみ、明かされない真相による余韻で、本書の中では一番好きだ。

何度か放射能という単語が出てくるが、文脈からすると誤用(「大気からの放射能が内部に入り込む」「放射能の溜まり」)で、そこは正確に放射線や放射性物質と訳して頂きたかった。SFなんだからさあ。


(結構、フィクションに於いても用語を正しく用いることが社会全体の科学的知識や理解の基礎に貢献するんではないかと思う。

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2014年08月10日

14/08/06


冷蔵庫扉側の主に飲み物を入れておく部分、その底から空間を二つに割くプラスチックの不要な仕切りが一枚生えていて、配置に制限がつき、購入以来不便であった。力任せに仕切りを折れば、底全体まで破損してしまうだろう。
この度私は急に冷蔵庫に飛びかかり、ナイフで仕切りの付け根を切りつけたが、まったく有効では無かった。そこで小型のこぎりを持ち出し、技術を駆使して仕切りを排除した。

このような一見固定化したような現実を打破する発想力、機転、技術は、圧倒的な力を持つ宇宙人が攻めて来たときなんかに極めて有効なのではないかと思う。特に冷蔵庫型宇宙人が攻めてくる映画とか。
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2014年08月08日

夏休み特別読み物 児童文学「ゲオルグの魔法」


 ゲオルグの魔法    平塚義信




あの森には結界で隠された一軒の家があり魔法使いが棲んでいると、数百年前から言い伝えられてきた。
今では信じる者も少ない。特に若者は。
しかし、悪戯少年のゲオルグは信じた。だって、見つけたのだから。その家を。


滅多に立ち入る者のない森の中で、ゲオルグはよく悪巧みを練っていた。
昨日、鍋料理を作っているおばさんを玄関に呼び寄せた隙に、裏口から台所に忍び込んで鍋にカエルを入れてやったのは、おばさんの悲鳴と相まって傑作であった。次は何をしようか。近所にレストランが出来ていたな、あそこに何か仕掛けてやろう。
その日もそんなことを考えながら歩いていると、木々の間に古めかしい扉が見えた。
おかしい。何度も来ているが、こんなものは見たことがない。誰かが捨てたのか。いや、そういう雰囲気ではない。立て掛けられているわけでもなく、そこに家があるような……。
ゲオルグは言い伝えを思い出した。これがあの魔法使いの家ではないか。あまりに長い年月を経て、結界に綻びが出来て一部が見えているのではないか。

静かに近づいてみる。扉の縁には靄がかかって、断面が判然としない。裏に回ると、靄で覆われ扉は見えない。
周辺を窺うと同じような窓があった。覗いてみると、扉近くの机と椅子、その椅子に腰かけたまま、こっくりこっくりと居眠りをしている老人が目に入った。これが言い伝えにある魔法使いであろう。他には竃、寝台、箪笥。奥には本がきっしり詰まった棚。粗末な家である。
もしも魔法使いが目覚めて、結界の綻びに気付いたら。家は再び隠されて、もう二度とゲオルグが目にすることはないだろう。だから、何をすべきかは決まっていた。忍び込んで、何かを盗んでくるのだ。例えば、本とか。今これ以上面白いことなどない。

予想通り、扉はあっさり開いた。誰にも見つからない家なのだから、わざわざ鍵を掛ける必要は無いのだ。
周囲を見渡しながらゆっくり歩いて、魔法使いの傍を通り抜ける。窓の外から覗いた通り、粗末な家でこっそり盗めるようなものは本しかない。箪笥や机の引き出しも気になるが、中を検めている時間はない。すぐに盗めるものがいい。
棚の前まで来たが、どれも怪しげながら何の本なのかわからない。手元の一冊を取り出そうとしたが、ぎっちり詰まっているので、力が要る。音をたてぬよう、静かに力を込めて引き抜く。ゆっくり、ゆっくり……。
異様な気配を感じ取ったのか、魔法使いが目を覚ました。「これ、何をしておる」 
その瞬間、ゲオルグは遠慮なく力を込めて本を引き抜くと、魔法使いに目も呉れず扉まで走り抜け、家から転がり出ると、森の外まで一気に逃げた。

何も追いかけてくる様子はない。ゲオルグは呼吸を整えながら急いで本を捲る。それが魔導書であることは、表紙に描かれた複雑で恐ろしげな魔法陣を見てすぐにわかった。手書きである。あの魔法使いが記したのであろう。
古い言葉遣いや知らない言葉に躓きながら読んでみると、しょうゆとソースの味を入れ替える魔法を記した本であることは理解できた。大した魔法ではない。
しかし、ゲオルグは喜んだ。大した魔法を記した本ならば、きっと自分には扱えず宝の持ち腐れだ。しかし、大した魔法ではないからこそ扱える可能性がある。
それから暫く、ゲオルグはぴったりと悪戯をやめて家に籠った。

勿論、改心したわけではない。良からぬことに用いるため、こっそりと魔法の習得に励んでいたのである。
そして到頭、魔法を己の物とした。表紙が上になるように魔導書を置いてその上に座り、呪文を唱え、しょうゆに手をかざすと、それはソース味に、ソースに手をかざすと、それはしょうゆ味になったのだ。

ゲオルグは十分に腹を空かせると、客の多い時間を狙ってレストランに赴いた。


ゲオルグはソースかつ丼と鰤の照り焼きを注文した。待っている間、人目につかぬよう、魔導書を尻の下に置く。
注文の品が届いた。ゲオルグは小声で呪文を唱えると、ソースかつ丼と鰤の照り焼きに手をかざす。それぞれを味見すると、果たしてソースとしょうゆの味は入れ替わっていた。
ゲオルグは大声で料理長を呼ぶ。周囲の耳目が集まる。何事かとやってきた料理長にゲオルグは料理の失敗を言い立てた。
「おお、なんたることか。所望したソースかつ丼はソースならぬしょうゆかつ丼であった。我が舌と臓腑はびっくりして腰をぬかした。更には鰤の照り焼きにしょうゆではなくソースを使っておるな。我が舌と臓腑は二度目のびっくりで機能不全寸前である。やい、金返せ。そして詫びとして最高級黒毛和牛フルコースを食わせよ。病院代とタクシー代も出せ。誠意を見せよ。ほれ、早う出せ」
これがゲオルグの狙いだった。衆目が多ければレストラン側は誤魔化したり無茶な追い出したりはしづらく、要求を飲むだろう。他の客にも味見して貰えば、ますますレストランは肩身が狭くなり、下手に出て多くの要求を飲むだろう。そして、ゲオルグの腹とポケットはパンパンになるのだ。

他の客がどよめく。ゲオルグと同じ注文をしていた客は、まじまじと料理を見つめている。
料理長は驚き「そんなはずは……」と絶句した。
ゲオルグは笑いを押し殺した不機嫌な顔で、「では、味見してみよ」と料理を押しやった。
料理長は強張った顔で「では、味を検めてみましょう」とソースかつ丼を一口食べ、不審な顔をすると二口、三口と食べた。鰤の照り焼きも同様にすると、「お客様、どちらも味付けは間違っておりません」と述べた。
もしや、魔法が切れたのか。ゲオルグは慌ててもう一度食べてみた。すると、ちゃんと味は入れ替わっている。では、料理長がしらばっくれているのか。しかし、一連の態度が演技とも思えない。
テーブルの周りには他の客が集まって来て、事態の推移を見守っている。料理長が「他のお客様にも味見して頂きましょう」と周囲に味見を勧めた。次々と手を出す客。拍子抜けしたような顔、やっぱりという顔、様々な顔で食べる客たちであったが、意見は一致した。味に異常はないと言うのである。
ゲオルグは魔法の本当の効果に気付いて、顔面蒼白となった。この魔法は、魔法を使った者の味覚を変える効果しか無いのだ。そもそも何のための魔法なんだ、これは!
冷ややかに怒りを湛えた料理長の顔、軽蔑と嫌悪を示す客たちの顔。誰もが、理不尽な言い掛かりで金品を脅し取ろうとする憎むべき悪党を見る顔をしている。
皆に囲まれていたゲオルグは逃げ出すことも出来ず……。



魔法使いは数日かけて結界を新しくすると、椅子に腰かけて一息ついた。あの魔導書が盗まれたのは残念だった。記していたのは大した魔法ではなかったが、目玉焼きを食べる時にあれがあると、一つで二つの味が楽しめたのだ。もう一度魔力を込めてあの複雑な魔法陣を描くのは骨が折れる。
「まあ、しょうゆとソースを別々にかければよいわ。毎日食べるわけじゃないし……」
魔法使いはそう呟いて、またこっくりこっくりと居眠りを始めた。






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2014年08月05日

今週の桃太郎


桃太郎一行は鬼ヶ島へと着きました。
「やあやあ我こそは桃から生まれた桃太郎、鬼ども勝負じゃ」
「よし、野球で勝負だ」
「受けて立つ」
控えの層も厚い鬼たちに対し、桃太郎一行は試合を成立させるための頭数が足りず、没収試合になりました。
つまり、桃太郎たちの負けです。
桃太郎はきび団子が入っていた巾着袋に泣きながら鬼ヶ島の土を詰めると、地元へと帰りました。
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2014年08月03日

14/08/01



 お尻の穴に期待感

本日午後未明、フルシチョワ東部の民家において奇跡のように光り輝く人工の筍がお目見えし、周辺住民の驚きを誘った。情報はすぐに世界各地へ打電され、一目これを見ようと高い塔の展望台に詰めかける人が続出し、一時入場制限が行われるほどの人気ぶりであった。洞窟の中で記者団に囲まれた市長は、「今はまだその時ではない」と語り、事態の推移を見守る考えを示した。


 歴史の定説に疑問符か

往年のヒット曲「ハッとして!Good」に「へッとして!Good」である可能性があると山梨密林大学の研究グループが発表しました。この研究グループは、一日中歌詞カードを眺めているうちに運搬中にヘが破損してハになったのではないかと閃めき、三日は興奮したと語っています。なお、山梨密林大学は今月末での廃校が決まっており、これが最後の研究発表となります。

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2014年08月01日

14/07/31



電線に沿って、細い糸で繋げた銀色の空き缶が幾つも電柱の間を渡っている。
夜の暗闇に銀色が映える。
こんなことになったのは、せいぜい二日ほど前からだ。

今夜は、その取り外し作業が行われている。
ここは4階の部屋。窓を開けて見える限りの電柱に、灰色作業服の工事士が何人も張り付いて空き缶を取り外している。
1本の電柱に3人は居る。

その下の道路を、手にした空き缶を棒で打ち鳴らしながら歩いている男がいる。
空き缶は全てあいつの仕業だ。夜の暗闇に不釣り合いな音を出しながら歩くその男を、工事士たちが無言で見ている。
多分、彼を捕まえるのは職務ではないのだろう。

打ち鳴らされる空き缶の音がやがて蝉の鳴き声と完全に入れ替わり、目が覚めた。
今思えば、電柱に張り付いた工事士たちは蝉の様だった。
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