2007年12月30日

怪しい来客簿

怪しい来客簿  色川武大  文春文庫


何と云っても大掃除の常は捗らぬことに尽きる。塵や衣類やそうでないものが積み重なった地層から、本が顔を出す。ぺらぺら捲って済むのは稀で、大抵は開いたところからきりのいいところまで読んでしまう。
大概そうやって出てくるものは、私の部屋の場合、ほんの数ヶ月の間に読んだニューフェイスだから顔を見て驚くこともないが、この度はいつからどうしてここにあったかわからぬ「怪しい来客簿」だったので魂消た。

私が好きな一冊であり、色川武大が泉鏡花賞を受けた一冊でもある。本書に著された色川の内面と感性が大好きなのだが、その割には読んだことをすっかり忘れていた。
もくじに目を通す。おお、おお、うむ、これだこれだ。確かに読んでいる。もくじだけでは半分くらいしか思い出せないけれど。しかし、確かに読んだし、確かに面白かった。タイトルがいい。「尻の穴から槍が」「サバ折り文ちゃん」「したいことはできなくて」「とんがれ とんがり とんがる」「ふうふう、ふうふう」「スリー、フォー、ファイブ、テン」「また、電話する」「たすけておくれ」…。
これらを読んでいて忘れていたのは不覚であり不誠実であり不義理である。私は色川と己に対する何かに応えるために、掃除の手を休め、夜中から日の昇るまでかけてこれを読み通した。好きな一冊なんだもの。
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2007年12月28日

07/12/24

先日述べたように、暫くの間、私は大変金に困っていた。食費を出すのも躊躇してしまうほどに逼迫してしまい、チエコに泣きついて何かと食べさせてもらうことで、どうにか毎日を凌ぐことができた。
最初は主にレトルト食品や麺類のような簡単なものを貰っていたが、私の風邪が治らないのを見かねたのか、やがて栄養が偏らないようにと肉じゃがやシチューなどを作ってくれるようになった。彼女が料理上手であることを初めて知った。
風邪の具合がよくなった頃、私はようやく金銭面で一息つくことが出来た。礼とお返しを兼ねてチエコに何か食べたいものはないかと訊くと、気になっているが独りでは行きづらい店があるという。そこを奢ることにした。
チエコの要望で連れて行かれた洋食屋は雰囲気のいい店で、客入りもよかった。確かにこの時期、独りでは来づらい印象の店ではある。私などはチエコがいても少々落ち着かない。


食事を済ませ、本屋を覗いたりホビーショップを覗いたりと私が落ち着けるコースを辿ったあと、そういう予定でもなかったのだが、チエコの部屋へ。
先の洋食屋とはまた違った意味で、少々落ち着かない。
炬燵に入っているとチエコが冷蔵庫から小さいホールのケーキを二つ出してきた。
師走の末だからとケーキを食べるのは、世俗に浮かれ年齢不相応の子供じみたことをしているようで幾分気恥ずかしくもあり、また、チエコがケーキを用意していてくれたことが嬉しくもある。
「ケーキを用意してくれていたのか」と訊くと、「まあ、縁起物だから」と言われた。
縁起物と来たか。これからどうなろうというわけでもないが、いい年した男女が一応特別な夜を過ごそうとしているのだから、もう少し艶のある返事をしてもいいだろうに。
出されたケーキは、一つでは二人分には少ないものの、一人分ではやや多すぎる大きさだ。
「こんなに食べ切れないよ」「明日も食べてけばいいじゃない」
なんだ、少しは気の利いた返事が出来るじゃないか。
申し訳なさそうに安物のシャンパンも出してきて、今日になって縁起物だからとなんとなくケーキを買ったのだということをボソボソ言いながらコップに注いでくれた。しかし、このシャンパンの瓶にはどう考えててもチエコが買いそうにない悪趣味に安っぽいデザインの包装がなされている。しかもノンアルコールだ。ケーキを予約してサービスでついてきたものではないかと思う。私の地元にはそういうケーキ屋があった。

乾杯して一口飲み、ケーキをつつく。窓から見える夜空が澄み切った闇と星の輝きでとても綺麗だ。
「シャンパン、あまりうまくないですね」「まあ、縁起物ですから」「縁起物ですからねえ」
クスクス笑いながら食べたケーキも大してうまくなかったが、今の二人にはこれくらいでちょうどいいような気がした。
posted by ヨシノブ at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月26日

07/12/26

古き時代に怨霊を鎮めた祠をうっかりリフォームしたばかりに、私は奇怪な現象に出くわした。
酒宴に招かれ大酒を飲まされたつもりが美人女子大生の尿を飲まされていたり、いくら舐めてもなくならない不思議なアイスクリームを舐めてたはずが美人若妻の乳を舐めていたりと、そういう呪いならば望むところで私の法力で怨霊を捻じ伏せてやったところだが、パソコンが起動しなくなってしまうという呪いをかけられ手も足も出ず、どこぞの修験者に祓ってもらうか修理に出すかしかなくなった。
近場で済む後者を選択したかったが、すぐにそうは出来ない。金がなかったのだ。

何しろ、自由にできる私財がたったの二千円。これでは修理費にならない。
背に腹はかえられぬと言うが、内蔵は金にかえらえる。散々迷った挙句、かくかくしかじかで私はいくらかの纏まった金を手にし、ようやくパソコンを修理に出せたのだった。
posted by ヨシノブ at 22:34| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月23日

無題

なんだい、またあんたか。
もともと人の集まるところじゃあないが、流石に今でもこうやってちょいちょい覗きに来るやつなんて、あんたくらいしかいないよ。すっかり顔を憶えちまった。何の用だい。

ヨシノブなら、もうここにはいないよ。
こんなに更新途絶えること、今まで無かっただろう。もう戻ってこないのさ。
ヨシノブがどうなってしまったのか、あんた心当たりがあるんじゃないのか?
単にパソコンが使えないだけなら、その辺の喫茶店から更新すればいい。前にもそうやってた。
でも、今回は、いや、これからは、それがない。
まあ、そういうこった。ヨシノブには、もう会えない。
俺はもう帰るところさ。あんたも早く帰りな。じゃあな。

















おーい、ちょっと待て! 待って!
あっちにヨシノブいた!
こっちに来てる。今そこで見た。うん。
えっと、じゃあ、そういうことだから。俺、帰りますんで。はい。お疲れ様でした。
posted by ヨシノブ at 05:22| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月06日

かわいいあの子のお祝いに

うわ、なにこれ、うわ、どうしよ、ねえ、お母さーん、ちょっと来てー、変な汁出たー。
あらどうしたの。あっ、これ精液じゃないの。タカシ精通したのよ。
マジで? すげー。
ちょっとお父さーん、こっち来てー。タカシが精通したのよー。
なんだタカシ、精通したのか。
そうなのよ、ほら、お父さんここ見て。
これマジで精液?
お、出とるじゃないか。わっはっは。よし、精通祝いにオナホールを買ってやるか!
うわマジでオナホ!? すげー。


親父、オナホール一丁!
へい、どれにいたしやしょう。
息子の精通祝いなんだ。ひとつ景気のいいやつを出してくれないか。
おめでとうございやす。それじゃこれなんかどうでしょう。「天地真理スペシャル・迷い道ぐねぐね」です。
ははは、今時天地真理は流行らんよ。それは私用に買っておこう。何か新作はないかね。
それじゃあ、こっちはいかがです。「美少女性器セーラー服」。若い人に人気のテレビマンガに出てくる露野うなぎちゃんをイメージした逸品で、崑崙山の仙人も下山して買い求めたという曰く付きのオナホールです。
それだっ! そいつをくれ!
へい、ありがとうございやす!


タカシ、開けてごらん。
オナホじゃん。すげー。
ほら、ちゃんとお父さんにお礼を言うのよ。
親父サンキュー!
わっはっは。ローションを塗り忘れないようにな。
あっ、しかもこれ崑崙山の仙人も下山して買い求めたという曰く付きの露野うなぎちゃんイメージオナホじゃん! すげえええええええ。マジでうなぎちゃんだああああああ。うわああああああ。う、うなぎちゃんのオ、オナホールだあああっ。うひゃあ。マジで? ホントに? これいいの? やったああああああ、うなぎちゃんでオナニイだっ。夢のオナニーライフだあっ。お、おほほほほほほほほほほあああああっ。うなぎぃ、う、うなぎちゃあああんっ。うなぎちゃんすっげ、すっげーよこれ。ああっ、うなぎちゃんにちゅっちゅだよ、うなちゅっちゅだよ。


しゃーしんー、写真はいかがっすかァー。写真を撮るカメラマンでーす。
あら、ちょうどいいところに流しのカメラマンがきたわ。せっかくだから記念写真撮ってもらいましょうよ。
そうだな、よし、カメラマン捕まえとくから母さんは私の燕尾服を出しといとくれ。
ええ。ほら、タカシも用意なさい。
う、うぎょぼ、うびょびょびょおおい。


はい、それでは息子さんの精通祝い記念写真を撮らせていただきます。ややっ、息子さんが手にしているそれは、崑崙山の仙人も下山して買い求めたという曰く付きの美少女性器セーラー服! 露野うなぎちゃんじゃないっすか。あるところにはあるんだねぇ。これ、あとで個人的に写真撮らせてもらっていいっすか? 文化遺産に登録しますんで。じゃあ撮りますよー。リー・リン・チェイ !


いやあ、いい写真を撮ってもらったな。
そうですねえ。ほら、タカシもこんな笑顔で。
ううううー。ううううー。
よしっ、今夜は鳩鍋だ。伝書鳩狩ってくる。
じゃあ鍋の支度しときますから、お父さん頑張ってね。
うーるるるるるー、うーるるるるるー。


はい、お聴きしていただいたのは、この季節にピッタリのザ・カリフラワーズで「のこきまどへひ」でした。ではリスナーのみなさんからFAXが届いていますので紹介しましょう。今日のFAXテーマは家族の幸せです。ラジオネーム・音速ワイパーさん。主婦の方です。「DJブヌヌギさん、こばはー」はい、こんばんは。えーと、音速ワイパーさん、わたしの名前は倉橋です。続きです。「いま、写真撮ってもらってのあとで、鍋にスープを入れながらラジオ聴いています。今日は息子のタカシにお祝いのお鍋です。写真は5枚撮りました。カメラさんは10枚撮っていきました。ハトはいま捕まえてます。ラジオ最後まで絶対聴きます。電源切らないでください」音速ワイパーさん、おめでとうございまーす。そうですか、タカシくんがね、お祝いということで。今夜は家族で鍋を囲むみたいですね。えっ、あっ、音速ワイパーさんと電話が繋がっているようです。ワイパーさん?
う、うるるる、に、ぎっぎぎぎ。ぬ、ぬうふ、お、おおふ。
息子のタカシくんが電話に出てくれているようですね。はじめましてこんばんは。DJ倉橋です。
おっふ、おっふ、おぎょぎょぎょ。おじるにたえて、ぬのまるい。ぬ、ぬる? ぬつのまたつに、ひじこみしえてん。つっぷり、もはれむあけのうきしずに、わがおゆるせひながりけるれん。
なるほどー。では時間がないので最後に今日の番組キーワードを言ってもらえますか?
ぽねくり三年けそ八年。
うーん、残念! でもあとで番組特製クオカード送りますから、待っててください。


やっ、こいつは活きがいいな。このっ、まだ生きてる。
あー、あー、スープが跳ねちゃってるじゃないですか。
母さん、蓋だ。蓋持ってきてくれ。物置の箪笥の上から二番目の左側にはいってる。
お父さんたら一度座ると動かないんだから。じゃあ、蓋とってきますね。
頼む。こらっ、暴れるな。
めぐいらもすぐてぬ、いたるやがじひこ。まさつそたわぬ、よほべびするつこ。







この家族は、1年後に心中しました。
posted by ヨシノブ at 00:45| Comment(2) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月05日

07/12/04

もう怒った。
もういい。
もう俺は死ぬ。
黙っていたところで誰もが死ぬに決まっているわけだが、その死という回避不可能の運命を押しのけて敢えて言いたい。俺は死ぬ。

風邪が咽喉に居ついて、すっかり声が変わってしまった。この変わった声というのがなかなか楽しくて、人がヘリウムガスを吸ってしまう道理である。
それでいつものように、人気声優になってラジオのパーソナリティーをやっているつもりの独り言を言っていたら、小学生から「あ、ラッシャー木村だ! サインちょうだい」って言われて追っかけられて。前述のとおり、私はとても怒っているので、真っ赤になった火かき棒で小学生をさんざんに打ちすえてやろうとしたのだが、生憎あたりに暖炉がない。すると今度は女から電話番号書いてくれとか言われて。社交辞令のつもりか? もしも本気なら、俺だって容赦しねえぞ。書いてやろうとは思ったのだけれど、その数字の配置が思い出せない。桁数も思い出せない。電話の、番号…。あるよ、確かにそういうのあるよ。でも、私はまだ自分に電話をかけるほど精神を病んではいないので、自分の電話番号なんて知らなくても当然なんだ。人間を番号で管理するような非人間的社会を断固拒否する! これは人間性回復への革命だ。でも、初診だと電話番号必須なんだと。体調悪くて早く帰って寝たいところなので、正直、面倒事は御免なさい。苦心の末に実家の電話番号書いてきた。そんで塗り薬貰ってきたんだけど、あれよ、三ヶ月の間、薬代ケチって自然治癒力に任せてもどうにもなかなかった手のカサカサが三日でほぼ完治した。薄く数回塗っただけよ。35グラムのうち、まだ5グラムも使ってないよ。症状が良くなってきたら弱い薬に変えますのでまた来てくださいって言われたけど、行くわけないよな。レールの敷かれた人生なんて、ロックじゃねえよ。
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2007年12月04日

07/12/03

今思い出せば、港にフェリーは三隻あった。大きいのが二隻、間に挟まれた小さいのが一隻。俺は絶対に端っこのフェリーに乗ったはずである。だから、小さいのに乗ったはずはない。
それが、どういうわけか出航したら乗っていたのは小型だ。しかも陸にあがって道路を走り始めた。俺は大型フェリーで今から知り合いと旅行に行くところだっつうの。降ろせ。ところが勝手に降りたらいかんと言うし、降ろせるまで十日かかると言う。俺は三泊四日の旅行に行くの。降ろせ。
フェリーは縮んで今やマイクロバスくらいの大きさになっていたし、時速三十キロくらいしか出てないから、甲板から飛び降りて逃げたら、運転手が追ってくる。お前ほかの客をどうするつもりだ。
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2007年12月01日

特選 秋の夜長の怖い話

第一話 「ふたつ置かれたおしぼり」

ひとりでファミレス行ったんだ。入り口のところで何名様ですかってきかれんじゃん。ひとりって言うじゃん。そしたら、店員なんか妙な顔してるの。で、席に通されたんだけど、おしぼりを俺のところと向かいの席に置くんだよ。変だなーって思って、向かいの席のおしぼりをよく見てみたら、おしぼりじゃなくて人骨だったので驚いた。


*秋というにはちっとばかり過ぎてしまったがの、これをやらんと冬の怖い話ができんのでな、無理を言ってこれをやらしてもらったんじゃ。どうじゃ、若い者ならたまにはファミレスに行くのじゃろう。しかしこれ聴いたらもう怖くてファミレス行けんじゃろが。なんと。ほっほっほ。強がりを言うのう。




第二話 「今夜は何を」

友人に霊が見える女の子がいます。よく○○の○○あたりで、酒に酔った金子信夫の霊が見えると言い張ります。


*この、寸でのところで場所が伏せられておるというのが、何ともいえず怖いのう。自分の近所と思ってみい、身近に霊がおるというわけじゃ。今だって、振り返れば霊がいるかも知れんぞ。ほっほっほ。ときに、かわやはもう済ませておるかいの。じじいの怖い話はたんとあるでの、今のうちに済ませておくが吉じゃぞ。




第三話 「廃屋に消える」

町外れに、もう何十年も前から人の住んでいない廃屋が一軒ぽつんと建っている。もともとは両親と幼い姉妹の四人家族が住んでいたらしいが、家財道具を残したまま、ある日突然姿が見えなくなってそれきりなんだそうだ。
あるとき、肝だめしと称してこの廃屋へ入り込んだ連中がいた。連中は興味本位で部屋を物色したが面白い物が見つからず、とうとう畳まで剥がしてみることにした。そして床板も剥がすと、そこには大きく口を開けた井戸があった。みんなで覗きこんでいると、急に背中を押されてみんな井戸に落ちて死んでしまった。


*これはの、じじいの知ってる話の中でもかなり怖いやつじゃ。ちと怖すぎたかのう。
そんなに怖くないか。そうか、面白くないか。そうか、うん。じじいじゃからの、若い人が喜ぶような話題がわからなくての、怖い話なら好きじゃろうと思うてがんばってみたんじゃが、そうか。
すまんのう、じじいは若い人と話がしたかったんじゃ。じじい友達おらんから、毎日寂しくてのう。年寄り連中とは、ほら、じじいは村松さんから嫌われとるから、誰も仲ようしてくれんのじゃ。
ほっほっほ。つまらん話を聞かせてしまって悪かったのう。もう、帰るでな。おお、そうじゃ、じじいの与太話に付き合ってくれた礼に、小遣いをやろう。少ないがな、ほら、ええからええから。なあ、受け取ってくれ。頼む。さあさあ。うん、ありがとう。
さて、じじいは帰って寝るべかな。じじいい楽しかったよ。じゃあの…。
posted by ヨシノブ at 23:15| Comment(0) | TrackBack(1) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする